EU Green Deal(グリーンディール)政策

Date: 25 March 2022

 

新しい化学物質戦略


EU では、Sustainable(サスティナブル)な社会を目指し、新しい化学物質戦略「欧州グリー ンディール」が発表されました。この政策は人々の幸福と健康の向上を目的として、雇用 を創出しながら、排出量の削減を促進するものです。

欧州委員会は、2020 年 10 月 14 日に欧州グリーンディールを発表し、EU の化学物質政策 の新たな長期ビジョンである「有害物質のない環境を目指す方針」を打ち出しました。こ の目的は、最も有害な化学物質を消費者製品から取り除き、ヒトや環境への暴露を減らす ことです。


 

欧州委員会は、これらの有害物質の 1 つ 1 つを規制することはせず、グループ単位で規制 しています。2050 年までに、持続可能で、気候中立のために温室効果ガス削減し、サーキ ュラーエコノミーを実現する社会を目指しています。

A European Green Deal | European Commission (europa.de)

EU Green Deal

化学産業におけるサスティナブル戦略

前図のとおり、EU では複数の Action が実施されています。〇で囲んだ部分は環境保護の
Action であり、ECHA が提案する次のサスティナブル戦略に関係しています。

Chemicals Strategy for Sustainability – ECHA (europa.eu)

  • 包括的な知識のベースづくり

早期警告および行動システムを確立すべく、化学物質の研究開発、特性に関する知識向上、ヒトと環境へのバイオモニタリングの実施などが行われています。

  • 簡素化と統合

1S1A(1 物質 1 評価)が実施されています。また、コンプライアンス違反に対するゼロトレランスを取り入れるなど市場監視を強化しています。

  • 立法の強化

有害物質から公衆を保護することを目的として内分泌かく乱物質(ED)への規制や PFAS の使用制限、 REACH/CLP 改訂など法律の強化が行われています。

  • 安全で持続可能な化学品利用の促進

安全で持続可能な設計を EU 基準とし、資金提供するなどして開発、展 開、商品化を促進しています。また材 料の無毒化、廃棄物の除染、化学物質 のリスク評価にライフサイクル全体を含む方法の開発が行われています。

  • グローバル視点での目標設定

GHS の推進、OECD 基準の採用、また模範を示すために EU で制限されている化学物質の輸出禁止などが行われています。

この戦略の影響(2021)

すでにいくつかの規制の更新や関連するガイダンス文書 に見られ、例えば食品接触材料や食品添加物に含まれる 遺伝毒性物質の特定に注力しています。その中には、が んや遺伝子変異を引き起こしたり、生殖系や内分泌系に 影響を与えたり、難分解性で生物蓄積性があったり、免 疫系、神経系、呼吸器系に影響を与えたり、特定の器官 に毒性を持つ有害な化学物質が含まれています。

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混合物評価係数(MAF)

化学物質の混合物による影響に対処するために、欧州委員会は REACH に「混合物評価係数 (mixture assessment factors(MAF) )」を導入する方法を検討しており、また、食品添加 物、食品接触材料、玩具、化粧品に関する規制など、他の関連法にも混合物の影響に関す る同様の規定を導入することを検討しています。

PFAS 物質

2021 年のもう一つの優先課題は、内分泌かく乱化学物質を特定し、特定された時点で、社 会にとって必要不可欠な使用でない限り、消費者製品から禁止することです。 REACH 規則 では内分泌かく乱化学物質の特定に関する要件の検討が進められています。特に自然環境 の保護のため、パーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質(PFAS)の使 用には特別な注意が払われなければなりません。PFAS は分解せず、長期にわたって環境に 蓄積することが認められております。水道や肉、魚等の食品に含まれ人間へ暴露されるこ とが報告されており、 PFAS は、社会にとって不可欠であることが証明されない限り、EU では段階的に廃止されていくであろう物質です。

今後

EU のグリーンディールに伴い、産業界は REACH やその他の法律の下でデータ要求の増加 に直面することになります。同時に、化学物質に関する法律の施行を強化するための措置 「ゼロ・トレランス」が導入され、欧州委員会によるコンプライアンス違反への追及を可 能にしています。
つまり、新戦略の下では、化学物質や材料は 生産から廃棄まで本質的に安全で持続可能な ものでなければならず、さらに気候中立(zero emission)になるような新しい生産プロセス と技術を導入する必要があります。

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